会社破産をしても社長の自宅は残せるか
1 会社破産後に社長の自宅を残せる可能性がある方法は3つ
本来的には、会社の債務と社長個人の財産は別物ですので、会社が破産しても社長が所有する自宅への影響は生じないことになります。
しかし、特に中小規模の会社においては、多くの場合社長が会社の債務の連帯保証人になっています。
会社が破産すると、連帯保証人である社長にも多額の支払いが請求されることになります。
会社破産に伴って、社長個人も自己破産をすると、基本的には自宅を失うことになります。
もっとも、次の3つの方法をとることができる状況であれば、自宅を失わずに済む可能性があります。
①任意整理
②個人再生(住宅資金特別条項の利用)
③任意売却後に賃借
以下、それぞれについて説明します。
2 任意整理
社長個人が保証している債務の金額が大きくなく、かつ一定の収入がある場合には、任意整理による解決ができることがあります。
任意整理は、基本的には残債務の元金、経過利息、遅延損害金の合計額を、3~5年程度で分割して返済できるようにする債務整理の手法です。
毎月の手取り収入から生活費(住宅ローン含む)を控除した残額が、任意整理後の月々の想定返済額を上回る場合であれば、自宅を守れる可能性があります。
3 個人再生(住宅資金特別条項の利用)
個人再生は裁判所を通じた債務整理の方法であり、債務総額を大幅に減額することができる可能性がある手続きです。
住宅ローンを除く債務総額が5000万円以下である場合、利用可能です。
また、住宅ローンだけは従前とおり支払って抵当権の実行を回避しつつ、他の債務は減額することができる、住宅資金特別条項という制度が設けられています。
自宅に住宅ローン以外の抵当権が設定されていない場合であれば、住宅資金特別条項が利用できる可能性があります。
4 任意売却して賃借する
自己破産をする前に自宅を第三者に売却し、売却先から元自宅を借りて住むという方法もあります。
ただし、任意売却は慎重に行う必要があります。
まず、売却金額は適正な市場価格を反映したものに設定する必要があります。
不当に廉価であると判断された場合、破産手続きにおいて売買が認められなくなる可能性があります。
自宅を任意売却して得た金銭は、基本的には生活上必要な目的にのみ使用し、残りは破産手続きにおいて破産財団に組み入れる必要があります(住宅ローンの残債分については支払っても問題ありません)。
自宅の価格が高い場合にも注意が必要です。
任意売却後に支払う賃料も高くなることから、破産後の生計を圧迫する可能性があるためです。